「瓢箪から駒」という成句がある。まったく思ってもみなかったこと、さらには、信じられないようなことが起こったときに使う。中国の仙人、張果老が各地を巡り歩くのにロバに乗り、休憩中はそのロバをひょうたんの中に入れていた、そういう由来があると言われる。人生には思いも寄らないことが起こるものだ、と思い起こさせてくれる成句である。
自然は、その名の通り、変わりやすく、予測ができない。これが、シャルロッテ・ドュマの出発点である。彼女は、人生の基本的なこと、つまり、人生のはかなさと同時に鋼のような強さに関心を向けて、この展覧会を制作した。
本展では、選りすぐった五点のオブジェを通して、遊び、魔力、想像力、無常などのテーマを織り込んで見せる。そのほかにも博物館や個人蔵の写真や版画、ドュマ自身が撮影した写真、そしてこの展覧会で初公開される映像がご覧いただける。
シャルロッテ・ドュマ
人間のあり方は、動物との関わり方から学ぶことができる、これがシャルロッテ・ドュマ(1977年、フラーディンゲン)の作品に通う一筋の赤い糸だ。 ドュマは、人と動物の絶えず変化する関係に着目する。動物たちといかに共存するか、動物たちをいかに利用するか、そして動物たちをいかに定義するのか。すでに15年以上もの間、彼女は動物を、とりわけ馬と犬をそれぞれ特別な文脈において観察してきた。動物にどのような価値を見いだすのか、それはその時々の文脈次第である。 2011年、ドュマは人命救助犬を撮影した。犬は同年9月11日のペンタゴンとニューヨークのツインタワーの攻撃の直後、生存者を探していた(Retrieved, 2011年)。ネヴァダ州では、人間の居住区に姿を見せるようになった野生の馬を追った(The Wildest Prairies, 2013年)。最近は、与那国馬と呼ばれる特殊な馬が生息する与那国島で仕事をしている。この種の馬はもう数頭しか残っていない。実用性がないからである(Stay, 2016年)。
ドュマは、アムステルダムのリートフェルドアカデミー(1996-2000)と国立視覚芸術アカデミー(2000-2001)で学んだ。主な個展には、コーコラン美術ギャラリー(ワシントンDC、2012年)、デ・ポント現代美術館(ティルブルフ、2015年)、フォトグラファーズギャラリー(ロンドン、2015年)、916ギャラリー(東京、2016年)、アンドリーセ・エイクギャラリー(アムステルダム、2017年)、ハイルブロン美術協会(ハイルブロン、2018年)、クライスラー美術館(ノーフォーク、バージニア州、2018年) がある。